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サグラダファミリアの中でスケッチを始めると、実に多くの人に声をかけられる。調子に乗ってアイムジャパニーズペインターなんていったらちょっとした人だかりができたくらいに。そこは教会の内部というよりは木々の間に佇んでいるような感覚で、完成が想像できなかった。目を閉じて、あるだけの想像力を掻き集めて、少しだけ描く。その行程を何度も何度も繰り返す。周りに人がいなくなるまで、時間が経つのも忘れてその空間に夢中になっていた。


受難の門を出ると、辺りはすっかり暗くなっている。コンサートは11時からなので、メトロを使ってランブラスの近くまで移動。駅を出ると、街はもう夜の顔。日中とはまた違うギラギラしたエネルギーに溢れて、街と人が不思議な感覚を共有していた。ランブラスから通りに入って、さらに細い通りへと抜ける。教会へと続く道では黒人に囲まれそうになり、小走りで駆けた。





普段見ることのない、夜の教会のステンドグラス。内側からの温かい光に照らされたそれは、言い表すことが出来ないくらい美しい。教会の前にはマルコのギターを待つ人々で溢れていた。日本語が少しだけ話せる中東の青年からチケットを買い、ゆっくりと門をくぐる。期待感に胸を膨らませた人々が、思い思いの席に座ってゆく。地元の人がほとんどで、観光客らしい人はほとんど見かけなかった。


教会の丸天井は、一つ一つ紡がれた音色をやさしく編んで夜に溶かしてゆく。開演の合図からずっと、見知らぬ人の笑顔が空間に溢れている。穏やかに、決して急ぐことなく、内側の宇宙へと染み込んでゆく。いつの間にか立ち上がって拍手をしていた。


マルコと握手をして教会を出た後も、宿に戻る気にはなれなかった。とりあえず朝から何も口にしていなかったので大通りでパエリアを注文する。通りの真ん中の席、大道芸人たちが踊っている。ワインは美味しかったけれど、やっぱりパエリアは塩辛い。


食事を終えランブラスを終わりまで進むと、港が見えた。小さな魚が群れをなして泳ぎ、得体の知れないゴミがそれを彩っている。前の日に泳いだ地中海のビーチとは違って、どこかもの悲しい。その感覚は夜の終わりを告げ、朝が近づくにつれて次第にその熱気を失う街を通り抜けて狭いベッドに戻った。
| すペいん | 22:09 | comments(2) | trackbacks(0)
バルセロナマールは某ガイドブックにも掲載されているくらいに有名なヒッピー宿。JBTみたいなドレッドのクールな白人に鍵を貰う。廊下ではスケボー、踊り場では刺青大会、トイレはいつもゲロ待ちの白人。部屋の鍵はもちろん使えずロッカーもダメ。とりあえず申し訳程度に安全そうな2段ベッドへ潜る。


インターネットスペースが受付の横に備え付けてあって、久々に日本を垣間見る。すぐにミクシィは検索できた。せっかくインターネットがあるのでバルセロナのパンクイベントを探したけれど、収穫なし。けれど翌日の夜にスパニッシュギターのフリーコンサートがあるという話を聞いた。マール周辺の通りはあまり治安がよくないらしく、遠出するのも億劫だったのですぐ近くのケバブ屋へ。ここは数日前にオープンしたばかりらしく、人も少なくて快適だった。(ちなみにここのパキスタン人の店主が突然自分はゲイだとカミングアウトしケバブを吹きそうになった)


翌朝、かなり早い時間帯に起床。朝食がスタートしてすぐにシリアルとパンを頬張りすぐに街へ出た。五分くらいで有名なランブラス通りへ出て、そこからは適当に歩く。パリやマドリッド、バルセロナといった巨大な観光都市はメトロが発達しているため、出鱈目に歩いていても迷子になることが無いので助かる。ホテルに一番近い駅の名前を覚えていればすぐに乗り継いで帰ってくることが出来るからだ。しかもメトロを乗り継ぐのであれば何処から乗って何処へ行ってもも1ユーロ。出口では切符を提示する必要が無いため非常に分かりやすい。


バルセロナはいくつかの大きな通りを中心として街が出来ているので、半日も歩けば街の構造がだんだんと分かってくる(旧市街は難しいけれど)。ランブラスから少し細い道を歩いていくつかの教会を巡っていると、港沿いにある巨大な市場を見つけた。日本では見たことの無いような、本当にカラフルでポップな市場。品物によって明確にエリア分けされており、肉と野菜と魚とお菓子が同じくらいの割合で展開している。午前中は市場の盛り上がりのピークで、さながら通勤時間の中央線のよう。その人ごみに入っていくのは少し気が引けたけれど、入ってみればこれほど面白い場所は無かった。とにかく魚の頭やら、牛の蹄やら、見たことも無いようなものがひたすら並んでいる。人々も陽気で、フランスのマーケットの空気とはまったく違う。それと市場にお菓子っていうのもすごい。主に入り口付近にお菓子やパンケーキの店が集中していて、カラフルなビーンズや見るだけで気持ちが悪くなりそうな色の数々が所狭しと並べられている。バルセロナの持つ熱気を詰め込んだような場所だった。



バルセロナでの買い物や食事は本当に楽しい。商売をやっている人にはたいてい英語が通じるし、バルサの話をするとまけてくれたりする。プジョル、デコ、メッシ、アミーゴス!!みたいなことを言うと本当に喜んでくれるのだ(さすがに教会のスタッフには使わなかったけれど・・・)。そうやって露店や大道芸人を見物しながら歩いていくと、遠くに異様な建物が見えた。カサ・バトリョ、ガウディの代表的な住宅建築。バルセロナは名建築が多い。少し歩くだけで様々な時代を代表する建築に巡り合う。しかしガウディ建築はそのなかでも特に異質だ。外観、内装、思想、彼が世界でもっとも有名な建築家の一人になった理由が建物の中に示されている。思考の果てにたどり着いたような、自然から智慧を受けたその立体はラスコーやアルタミラで見た古代人の壁画に通ずるものであるように感じた。


すぐ近くにあるカサ・ミラにも行ってみたけれど、こちらは少しテーマパーク化しすぎていて残念だった。列の前に並んでいたイタリア人の女の子にガウディ建築のレクチャーを頼まれ、そんなことを説明できるほどの知識もないくせに適当に喋りながら一緒に展示をまわる。途中でその人の彼氏も合流し、3人でガウディの模型を眺めながら出口まで行って別れた。その女の子は吹き込まれた出鱈目なガウディうんちくを得意げに彼氏に吹き込んでいた。ちょっと悪いことをしたような気もするけど、本人は楽しそうだったからいか。イタリアで間違ったガウディ情報が流れたりしたら面白いな。



カサミラを出ると、一気にサグラダファミリアを目指した。これだけは日没前に見ておきたかったのだ。カサミラのスタッフに聞いた道を少し行くと、受難の門のファサードが目に飛び込んできた。自然と早歩きになる。そこに近づくにつれて、同じ目的地を目指す人が増えてくる。一体幾人の人々がこの壮大な神の塔を目指すのだろうか?いくつものビルを抜けると、人の海にぶつかった。受難の門は出口側になっているようで。反対側の生誕の門までぐるっと一周するかたちになった。入り口には日没前にもかかわらず人で溢れかえっていた。


いざ生誕の門の側に来てみたものの、しばらくは圧倒されてチケットを買う気力も起きなかった。写真からイメージしていたよりも壮大なスケール、写真で見たよりも青い空。目の前に広がる池に写り込んだ聖堂を時間が経つのも忘れて眺めていた。

              (つづく)




| すペいん | 19:21 | comments(0) | trackbacks(1)


白いテーブルクロスにぼんやりと光が落ちて、開演前の空気に融けてゆく。感覚を狂わせる巨大な美術館は、昼とは違う表情でそこにいる人々を内包している。白い壁の境界は曖昧で、揺るぎないはずの地面が急に不安定なもののように思えてくる。地震のときに感じるような、不安の中に混じった純度の高い興奮が胸に溢れて、視界が妙にブレる。


ピアノとアコースティックギターのデュオが登場すると、室内の温度が少し上がった。音のうねりが、信じられないくらい高い天井へと駆け上がり弾ける。空気が伸縮して、時間の感覚が無くなる。なんだか本当にあっという間で、密な時間。鳴り止まない拍手の中に、会場全体でハミングしたメロディがフィードバックした。


外に出ると、時刻は午前1時近い。死ぬほど疲れているはずなのに、そのままどこへでも行けそうな気がする。もうとっくにガス欠のはずなのに、それでも不思議と力が漲る。


ふと人間って、本当はもっとタフな生き物なんだと思った。本当にそれが束の間の出来事であれ、美しいものを分かち合い自身の糧にすることができる。あらゆる経験に学び、自身の美意識を形作ることができる。


ホテルはビルバオの高台にあるユースホステルで、多くの白人パッカー達が夜通し騒いでいた。部屋に荷物を置いた後ホテルのパティオに出ると、祭りの喧騒の中で何人かのヒッピー達が物憂げに座っていた。朝になれば、祭りは終わる。会話と言う形をとらなくても、少しだけ気何かを共有できる瞬間がある。いつベッドに入ったのかは覚えていない。けれど、目覚めたときのビルバオは日常の形に沈んでいた。

| すペいん | 17:53 | comments(0) | trackbacks(0)



スペインに入って3日目、ゲルニカの次に(ゲルニカについてはまた別の機会に)訪れたのはビルバオのグッゲンハイム。数キロはなれた高速道路の上からも確認できるほどの巨大でクレイジーな意匠。珍しく高速の乗り降りもスムーズで、一度も迷うことなく到着した。


チケットと交換で手首にパスが巻かれ、その日の内ならば何度でも再入場できるようになっている。外観のインパクトに負けないくらいの現代美術が並ぶ館内。内部空間は完全に常識の範疇を越えたスケールで、その中心にリチャード・セラの巨大な彫刻(というよりもはや建築)が鎮座している。


パティオのようなベランダのような不思議な空間で一人スケッチをしていると、一組のカップルがドアを開けて入ってきた。さりげなく近寄ってきて、スケッチをチラチラ見る。スケッチの最中に覗かれることはしょっちゅうだったので、最初は気にもしていなかったけれど、どうも様子がおかしい。そーっと気づかれないように彼らのほうを向くと、女のスカートに手が入っている。目が会うと男女共にニッコリ、驚いてこっちも何故かニッコリ。不思議な異国間コミュニケーション。


立ち去ることの出来る雰囲気でもなかったのでひたすら紙とにらめっこしていると、しばらくしてどこかへ行ってしまった。見せてくれるのはまんざらでもないけれど、自分達の性癖にわざわざ俺を巻きこまなくても…。なんだかびっくりしているうちに日が暮れてしまった。




サマータイムなので日が完全に沈むのは9時過ぎで、ホテルに着くのはいつも日付が変わってから。日記をつけたり話したりもするわけで、当然睡眠時間が短くなる。平均睡眠時間は3〜4時間。何かにつけて揉める面子だったのでほとんど眠れない日もあった。しかし今日はそんなことも言ってられない。前日割り振られた部屋が明らかに使用人の部屋で客用でなかったとしても、今日ばかりは眠いなんていえない。グッゲンハイムジャズが待っているのだ。


昼に買ったチケットを見せると、7ユーロほどチャージするだけで最高の演奏が見られる。この日が本当に待ち遠しかった。その日のビルバオはちょうど祭りで、夜になるとグッゲンハイムの向こうから花火が上がりだした。受付が始まる11時まで、ライトアップされたグッゲンハイムとそれを彩る火をぼんやり眺める。時間の感覚はどんどん緩くなり、疲れを感じない細胞はどんどん加速してゆく。今日は祭りなのだ。

               (つづく)

| すペいん | 19:23 | comments(0) | trackbacks(0)
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