今、ヘッドフォンの中で鳴っている。携帯電話の画面が蛍光色で縁取られ、親指の輪郭がうっすらと見える。手を休めれば、そこには自分さえもいない。
ジャンべが鳴る、アコースティックのスライド音が空気を緩め、スパイスはマリンバだろうか、ブルースハープが道の真ん中を避けるように歌声を追いかける。
鼓動、低音がこめかみの辺りと呼応して、顎で輪を描くような具合に体を揺らす。ゆらゆら、ゆらゆらと、少し不格好に。
鼻歌のようなハーモニー、空気感のつまみは半時計回りに絞られていく。
それでもこれは、リハーサル。脱力、脱力、夜は短い。